[第2回 続編]スマホやタブレットの充電は、謎だらけ。ワットモニターで消費電力を測って、謎を解明してみた。

前回行ったChromebookの充電時消費電力測定で、深い闇に落ちてしまった筆者ですが、追試をしながら、深い闇から脱出していきます。

前回使ったChromebookと、新たに手持ちのスマートフォンを用意、更にバッテリーが弱った廃棄寸前のタブレットも準備しています。
種類の異なるUSB充電器(ACアダプター)です。

Chromebookを使って、USB充電器の違いにより、充電時にどんな変化がでるか確認していきます。

前回のおさらい。大きな謎は、2つあった満充電のポイント

lenovo Ideapad duet Chromebookを、純正のACアダプターでバッテリー残量8%から充電

充電しながら、サンワサプライのワットモニターで消費電力を測定しました。

消費電力測定中のChromebook

その結果、満充電を示すグリーンのランプが点灯した後も、充電が続き、約8%ほど追加充電されて、やっと電力供給が停止しました。

この過充電のようにみえる現象を不思議に思い、追試を行います。

グリーンのランプが点灯したところで、充電を止め、Chromebookを起動。
バッテリー状態を確認します。OSに表示されたバッテリー状態は100%でしたが、いつもより、早いペースでバッテリーが減少していきました。

前回の消費電力測定が終わった後、この理由をネットで調べ回ります。
ずばりの答えは、見つからなかったものの、それらしき答えには辿り着きました。

今回、それらしき答えが正しいのか、確認するため、消費電力測定を行っていきます。

用意したACアダプターは2つ、lenovo純正品とどう違うか

lenovo純正のUSB充電器(ACアダプター)には、次のように刻印があります。
output:5V 2A
・エネルギー効率基準マーク:Ⅵレベル

lenovoの取扱説明書では
・最大消費電力10W
USB PD(Power Delivery)に対応

ボルト数が同じで、電流が2A以上のUSB充電器を家じゅうから探してきました。

ひとつ目は、ASUSのUSB充電器

USB充電器には、次のように刻印があります。
output:5V 2A
・エネルギー効率基準マーク:Ⅴレベル

2012年頃買ったNexus7用の純正品で、現在は、壊れかかったHuaweiのタブレットを充電するのに使用しています。

ふたつ目は、エレコムのUSB充電器

USB充電器には、次のように刻印があります。
output:5V 2.4A
・製品名:MPA-ACC04bk

メーカーのホームページで確認すると、「おまかせ充電」「急速充電」に対応とありますが、USB PD対応ではないようです。

前回、無負荷時待機電力を測定した結果では、0.1W前後と、やや高めの待機電力でした。

ASUSのUSB充電器から実測開始

まずは、無負荷時待機電力

例によって、ワットモニターは、0.3W以下の計測が出来ない簡易電力量計なので、デスクスタンドなど待機電力がある程度想定できている機器と一緒に測定して、実推値を求めます。

USB充電器の待機電力を測定中

その結果、無負荷時待機電力は0.1W前後。
エレコムのUSB充電器よりも、若干少なそうな感じです。

充電開始っと思ったら...

ASUSのUSB充電器をChromebookにつないで、いざ、充電開始。

と、コンセントを刺したのですが、ワットモニターの値は、ゼロを指したまま。

充電開始しません。

何が気に入らないのか、Chromebookは、適切なUSB充電器ではないと判断したようです。

今回の充電時の消費電力測定では、Chromebookの電源を落としてあるので、警告表示などの画面確認ができません。後日改めて、状況を確認することとし、先に進みます。

エレコムの急速充電対応のUSB充電器で実測

ワットモニターで消費電力の推移を見ながら、Chromebookのバッテリー残量が、8%からフル充電になるまで、実測していきます。

エレコムの充電器でChromebookを充電。消費電力を計測

私の予想では、純正のACアダプターが2.0Aなのに対し、エレコムのACアダプターが2.4Aなので、充電時間が2割短縮されるのでは...と思っていました。

が、結果は、惨敗

ポイントなるところを純正アダプターと比較しながら見ていきます。

エレコム純正品
充電開始時(定電力供給時)の消費電力10.7~11.2W12.3~12.4W
上記消費電力の持続時間1時間30分2時間5分
消費電力下降開始後、満充電インジケータ点灯までの時間2時間1時間
満充電インジケータ点灯時の消費電力3.6W3.7W
満充電インジケータ点灯から電力供給停止までの時間2時間1時間55分
電力供給停止直前の消費電力0.8W0.8W
電力供給停止後の待機電力0.3W0~0.3W
充電に要した時間(インジケータ点灯まで)3時間30分3時間5分
充電に要した時間(電力供給停止まで)5時間30分5時間
積算消費電力(実推値)35.5Wh37.1Wh
純正品 vs エレコム

充電時間は、エレコムの方が30分長く掛かります。

lenovoのChromebookが対応していた、USB PDの関係で差が出たと思いますが、詳細は不明です
純正品のUSBアダプターをよく観察すると、USBケーブルの形状は、USB TYPE-A to TYPE-C。
つまり、USBアダプター自体は、USB PD対応ではありません。lenovo純正の方が、優秀ということでしょう。(ということで、USB PD対応の充電器も買いました。別のコンテンツで急速充電の様子をレポート予定です)

消費電力は、エレコムの方が小さな値にはなりましたが、かなり大きな振れ幅で変動しながら、電力供給していたので、計算から求める今回のやり方は、不適切だったかもしれません。
参考程度にしておいてください。

エレコムのアダプターでも、インジケータで表示される満充電と、実際に電力供給が停止する満充電の2つがありました。

消費電力で、その比率を見てみると
満充電となったインジケータの後、9%程の電気が追加で消費(充電)されていました。

インジケータ上の満充電と電力供給から見た満充電

リチウムイオン電池における満充電と残量ゼロとは、どのような状態なのかから説明します。

まず、リチウムイオン電池の公称電圧は3.7V。

満充電とは、電圧が約4.2Vの状態です。
残量ゼロとは、電圧が2.8Vの状態で、終止電圧と呼びます。

満充電とは、それ以上電圧が上がると過電圧。電池の爆発など危険な状態にならないための上限です。
終止電圧とは、過放電で、バッテリーに大きなダメージを与えてしまわない下限。
といえます。

実は上限の電圧値は4.1Vだった時代がある

最初から、4.2Vが上限値だった訳ではありません。
4.1Vを満充電としていた時代があります。

たった0.1Vですが、これだけで電池の容量は1割近く増えるのです。

時代のニーズとして、電池の容量を増やす必要があったので、上限値を0.1V増やしたのです。

その結果、デメリットが生じます。

・充電時間の長時間化

・バッテリーの劣化

満充電が2種類あるのは大人の事情

充電時間の長時間化は、スマートフォンを売る立場の方から見ると不都合です。

なので、
「旧規格であった4.1V付近になった時に、満充電のランプを点灯させてしまえ」
と言ったかは、判りませんが、大人の事情で、満充電の表示を出しています。

満充電のランプを点灯させた後も、4.2Vになるまで充電を続けるのは、「電池の持ちが悪い」となるのを避けるため。

インチキ臭い手法ですが、皆さん、寝ている間に充電していることが多いので、気が付いていないのではないでしょうか。

さて問題は、デメリットで書いた「バッテリーの劣化」です。

充電を繰り返していると、「バッテリーの持ちが悪くなって、夕方まで持たなくなってくる」ことは、皆さん経験されていると思います。

「そろそろ、買い替え時だな」と思いつつも、スマートフォンの価格の高さに、バッテリーが劣化しなければ、もう少し長い期間使えるのにと思っているのでないでしょうか。

充電を500回繰り返すと、電池容量は60%に減少すると言われています。
これが、「寝ている間に充電しておいたのに、夕方までバッテリーが持たなくなった」状態。

実は、4.2Vの満充電状態ではなく、4.1Vの満充電状態だと、大幅にバッテリーの劣化が減るそうです。

極端なことを言えば、満充電にしないが、夜まで持つ程度に充電するのが、最も充電池に優しい充電方法です。

次回予告

次は、バッテリーが、かなり劣化したタブレットを使って、充電と利用による放電を行います。
この時に起こる現象から、バッテリーの劣化によって、電池の中で何が起きているのか、確認します。