[第2回続々編]バッテリーが劣化するとは。内部抵抗の増加とバッテリーの持ちの関係。

スマートフォンやタブレットのバッテリーが劣化するとは、どういうことでしょうか。

症状でいうと、「寝ている間に充電したのに、夜までバッテリーが持たない」といった短時間で電池切れになってしまう現象です。

この現象が起きる原因を、バッテリー内部で起きていることから、見ていきたいと思います。

スマートフォンのバッテリーは、リチウムイオン電池

スマートフォンでは、リチウムイオン電池の満充電や電池残量を知るために、電池の電圧を測定することで、簡易的に把握しています。

前回のおさらいも兼ねて説明すると、

満充電は4.1Vと4.2Vの2つのポイントがあります。
4.1Vになった時に、インジケータで満充電を知らせ、更に残100%の表示を出します。
4.1Vに到達しても、充電は止まらず、更に4.2V近くまで充電が続き、本当の満充電状態となります。

4.2V付近で止まるのは、過電圧によるバッテリーの爆発事故を防ぐため。
4.1Vから4.2Vまでの間の充電は、長い時間を掛けて、ゆっくり充電していくイメージです。

バッテリー残量がゼロの状態は、2.8Vで、終止電圧と言います。
(注:ネット上には、2.5Vや2.7Vが終止電圧と記載しているサイトもあります。何が正しいか、判断する知識がないので、併記しておきます)

バッテリー残量が5%のあたりから、急激に電圧が落ちて2.8Vに到達するのですが、2.8Vを下回ると、過放電となりバッテリーに大きなダメージを与えます。
このため、バッテリー残量が5%前後でシャットダウン処理が走って、強制的に電源断となるはずです。

まずは、バッテリーの劣化したタブレットで現象を確認

用意したのは、Huawei Mediapad T2 8.0 Pro というタブレット。

バッテリーの劣化により、全く使い物にならないレベルのポンコツです。

バッテリーが劣化したタブレットを充電

このタブレットを使って、バッテリーの劣化で、何が起きているのか確認します。

まずは充電から

USB充電器を繋ぐと、
タブレットに「26%」と表示が出て、現在の充電状態が表示されました。

充電中の消費電力の変化を見るため、サンワサプライのワットモニターを経由しています。
充電開始直後は、5.0Wの消費電力が表示されていましたが、9分ほど経過したところで消費電力の下落が始まります。
正常な状態のバッテリーだと、この5Wで充電している時間が、もっと長いのですが、流石、ポンコツ。

充電開始から35分で、消費電力が1.8Wとなり、それ以上、下がらなくなりました。

充電開始から1時間10分。満充電を示すインジケータが点灯しました。
この時、タブレットの電源ボタンを押すと、充電状態が表示されるのですが、何と「90%」の表示。

充電状態が「100%」と表示されるようになったのは、充電開始から2時間10分後。

しかし、充電はこれで終わりません。消費電力1.8Wの状態が、更に数時間続き、やっと待機電力の0.3Wへ。

何と満充電を示すポイントが3つ。頭の中が、バグりそうです。

リチウムイオン電池の充電パターンについて、おさらい

最初は、定電圧定電流で、ドバドバって感じで充電していきます。7~8割充電が進むと、次のステップに進みます。

次のステップでは、徐々に電流を減らしながら、充電を進めていきます。

満充電の直前に、電流が一定値になり、ポタポタって感じで慎重に充電します。
このように電流が一定になると、最初の満充電ポイントである、インジケータの点灯、バッテリー残量100%の表示になります。

そのまま、電流をポタポタいれながら、本当の満充電状態まで進みます。

今回の、充電パターンを見て感じるのは、劣化したバッテリーは

定電圧定電流で、ドバドバ入れるところが、極端に短く。
充電後半の、ポタポタって感じになるあたりから、妙に時間が掛かるということ

タブレットを使ってみます

いわゆる、見掛け上の「フル充電」で、電源ON。
起動直後のバッテリー残量表示は99%。「26時間43分使用できる」と表示が出ています。

期待通り、バッテリーの減少速度が速くて、18分経過時点で89%の表示。

残89%なのに、突然が落ちて、リブートの繰り返し。

どうしようもなくなったので、USB充電器を接続、シャットダウン処理をします。この時、表示されたのが「充電中 0%」の表示。

USB充電器を外し、再接続をします。
今度は、「84%」の表示に変わりました。(流石、ポンコツ)

そのまま、満充電のインジケータが付くまで充電。
14分ほどで、インジケータ点灯。「90%」の表示になりました。

電源オン。
14分経過し、82%の表示まで落ちたところで、再び、リブートが発生。

この後も、短時間で、電源が突然落ちてリブートを繰り返す状況が続きます。

元々は、こんな落ち方はしていませんでした。

最初は、やたらとバッテリーの減りが早いなくらい。

次は、バッテリーが1時間持たなくなって、バッテリー残量30~40%くらいからの、急なシャットダウン処理の開始

最後は、ご覧のように、電源断とリブートの繰り返しです。

バッテリーが劣化すると、電池内部では何が起きるか

充電と放電を繰り返すことで、電池内部において、いくつもの化学変化が起きています。
バッテリーの劣化として、電解液の化学反応にともなう内部抵抗の増加など様々なことがあります。

今回は、私にも理解できた、電池内部の抵抗値の増加について説明します。

電解液が分解反応をすることで組成された化学物質が、電極表面を覆ってしまうため、バッテリー内部の抵抗値が増えます。

スマートフォンやタブレットなどは、バッテリーの電圧測定することで、バッテリー残量などの充電状態を把握する方式が、採用されています。

内部抵抗とバッテリーの電圧の関係を、式で表すと

充電電圧=充電で発生し、充電率で変化する電圧 +(内部抵抗 ✖ 充電電流)

放電電圧=放電で発生し、バッテリー残の状態で変化する電圧 ー(内部抵抗 ✖ 放電電流)

つまり、内部抵抗が増えてくると、正しくバッテリーの充電状況を把握できなくなってきます。

以下、分かり易いように、
・新品のバッテリーの内部抵抗をゼロ
・満充電判定の電圧を4.1V、バッテリー残量80%を3.9V
・バッテリー残量5%を3.3V、バッテリー残量ゼロを2.8V
・充電電圧は5Vの定電圧、電流は1Aから0.3Aまで変化する
・劣化したバッテリーの内部抵抗は0.6Ω(オーム)
として説明をしていきます。

充電中の影響

充電電圧=充電で発生し、充電率で変化する電圧 +(内部抵抗 ✖ 充電電流)

最初のステップは、定電圧定電流でドバドバっと充電が開始されます。
充電し始めると、内部抵抗の影響が出て、測定される電圧は、0.6V(0.6Ω✖1A)多く出ます。

これが、定電圧定電流で、ドバドバっと充電している時間が短くなる理由。

単純計算だと、新品バッテリーの40%のところで、お腹いっぱいです。

ところが、単純にいかない理由が、計算式の中にあります。
充電が終盤になると、充電する電流を減らし始めます。
つまり、内部抵抗分の電圧が減少し始めます。
ゴールが、どんどん遠くなる感じでしょうか。
これが、私が感じた充電の後半が、やたらと時間が掛かる理由

最終的に0.18V(0.6Ω✖0.3A)分の下駄を履かされているので、新品のバッテリーの8割くらいまで充電したところで、満充電のサインが出て充電ストップ。

これが、最初に起こる現象。「バッテリーの持ちが悪くなった」と感じるところでしょうか。

放電中(使用中)の影響

放電電圧=放電で発生し、バッテリー残の状態で変化する電圧 ー(内部抵抗 ✖ 放電電流)

分かり易いように、更に条件を加えます。
・消費電力は、バッテリーの残容量や使用状況に関われず、一定量とします。

ここでも、内部抵抗による影響があります。

簡単に言えば、実際のバッテリーの残容量よりも、少なく測定されるようになります。
バッテリー残量が多いときは、放電電流が少ないため誤差が少なく、バッテリー残量が少なくなると、放電電流が増えて誤差が増えます。
これが、バッテリー残が30~40%を切った辺りから、やたら減りが早いと感じる理由です。

さあ、最終段階です。

電気の貯めこみが出来なくなった機器は、
ACアダプターに繋がれたまま使用され、温度上昇による更なるダメージを受けます。
使い勝手が悪いので、数週間放置され、過放電になったかもしれません。
既に、タブレットの内部では、バッテリーが膨らんでいるかもしれません。

もう、いつ何が起きても、おかしくない感じ。

こうして、我が家のポンコツ・タブレットが完成しました。

バッテリーを劣化させにくくするために

我が家では、だいたい3年くらいで買い替えとなるスマートフォンやタブレット。
買い替えの理由は、バッテリーの劣化です。

タブレットのバッテリーの劣化を少なくし、少しでも長く使えるようにする方法を纏めました。

(1) 充電は、インジケータが知らせてくれる満充電(4.1V)まで。

4.2Vまで充電するのに比べ、劣化が1/2になります。
無論、充電状態は表向きは100%ですが、本来のMax値より10%少なく、使用可能時間もそれなり。
スマートフォンだと使い勝手が悪くて困りますが、タブレットなら問題ありません。

その為には、寝ている間に充電するのではなく、昼間の充電&充電状況の監視を心がけます。

(2) 充電回数を減らす

バッテリー残が少なくなったら、充電するようにします。

スマートフォンだと、毎晩充電しておかないと不安ですが、タブレットなら問題ありません。

(3) 長期間外出する時は、スタンバイではなく、シャットダウンしておく。

過放電を防止するため、旅行などで不在にする時は、シャットダウンをしておきます。

過放電は、一撃でバッテリーの蓄電容量を減少させる破壊力があるので、絶対避ける必要があります。
スマートフォンであれば、長期間のバッテリー切れは考えにくいのですが、家の中で使う機器は、気を付ける必要があります。

次回予告

最終回は、スマートフォンを使って、充電に最適なUSB充電器選びをします。
実は、手持ちのスマートフォンですが、純正品のUSB充電器を紛失。純正品ならメーカー独自仕様の急速充電対応だったのですが。
Chromebookの充電でも対決させたUSB充電器。今回は、どうなるのでしょうか。
なんとテスト直前に、バッテリー劣化であっという間に文鎮化。買い替えとなりました。
今回購入したスマートフォンは、USB充電器が付いてこない商品。
手持ちのUSB充電器で大丈夫なのか、急速充電器を買い増すのか。