待機電力を極限まで減らそうとしたら、衝撃的な結果が待っていた

所用で1週間ほど、家を空ける機会がありました。
ならば、日ごろから興味があった、待機電力を極限まで減らした状態で、どれくらいの電力消費になるか調べてみようとチャレンジ。

在宅時にはOFF出来なかった家電ですが、
あれや、これや止めまくった結果は...かなり衝撃的でした。

その前に、待機電力の本質を知ることから始めます。

そもそもですが、待機電力とは

待機電力の定義

待機電力または待機時消費電力には、明確な定義がありません

一般的な感覚としては、
『コンセントに繋がれた家電が、電源が切れている状態でも消費する電力』
なのですが、

広義には、
『電話機や無線ルーターのように、使用されるのを待っている状態で消費する電力』
も含まれます。

更に広く捉えれば、
『電気ポットや炊飯器のように、出来上がったあとの保温状態(状態維持)で消費する電力』
も含んで良いかもしれません。

当サイトでは、待機電力の定義を、かなり広義に捉え、待機電力の正体に迫っていきます。

待機電力ゼロには規格がある

「家庭用電気機器-待機時消費電力測定」に関して、国際規格IEC62301規格(JIS C 62301規格)があります。この規格の中で、0.005W未満の消費電力であれば、待機電力ゼロと表記して良いことになっています。

待機電力の表示義務は、家電ごとに違う

待機電力を気にして、小まめにコンセントを抜きたいところですが、これが中々、めんどくさい。
ならば、待機電力の大きいものを重点的に対策するのが賢明なやり方です。

しかし、ここに大きな壁が待っています。

実は、待機電力の表示義務があるのは、炊飯器など数品目だけ
どのような決まりになっているか表に纏めました。

消費者庁のホームページにある「電気機械器具品質表示規定」から抜粋

品目規定
エアコン冷房消費電力、暖房消費電力の表示のみ
テレビ年間消費電力量の表示のみ
ジャー炊飯器年間消費電力量の表示
一回当たりの炊飯時消費電力量
一時間当たりの保温時消費電力量
一時間当たりのタイマー予約時消費電力量
一時間当たりの待機時消費電力量
電子レンジ電子レンジ機能の年間消費電力量
オーブン機能の年間消費電力量
年間待機時消費電力量
年間消費電力量
冷蔵庫消費電力量
卓上スタンド消費電力
洗濯機規定なし
電気ポット規定なし
掃除機規定なし
電気機械器具品質表示規定から抜粋

面白いことに炊飯器が、妙に細かく規定されているのだ。

また、電子レンジや洗濯機ですが、2000年代に発売になった国産メーカー製品は、待機電力ゼロが実現されているので、使い方を気にする必要がなくなっています。

テレビやエアコンのように、リモコンでの操作待ちが普通の家電ほど、待機時消費電力の表示を義務化すれば良いと思うのですが、現実は違うようです。

業界の自主的な考えでしょうか、カタログや取扱説明書に待機時消費電力の記載がされているので、消費者としては助かりますが、ナゼなんでしょうね。

待機電力は、なぜ必要なのか

待機電力の役割から、大きく4つに分類しました。

機能の維持に必要な待機電力

内部時計の維持、タイマー予約、設定値の保持など。

指示待ちやセンサー類による待機電力

リモコンの受信待ち、電話の着信待ち、温度センサーなど。

起動時間短縮のための待機電力

分かり易いところでは、Blu-ray Discレコーダーの起動時間短縮機能(瞬間起動)。
パソコンで言うところのスタンバイなのですが、かなり大きな待機電力になっています。

電気泥棒による待機電力

USB充電器のように、コンセントに刺しただけで電力が消費されるもの。
ノイズフィルター回路による電力消費
消費者からは使っている感覚が全くない待機電力です。
筆者は、「電気泥棒」と読んでいますが、電気回路の特性により発生してしまう待機電力です。
ノイズフィルター回路は、ほとんどの家電に組み込まれています。

我が家の待機電力は

我が家にある電化製品の待機電力をカタログベースですが書き出してみました。

待機電力通常状態
ガス給湯器1.6W常時通電/電源切断不可
冷蔵庫不明24h稼働
(年間消費電力:310kWh)
インターフォン4.5W24h稼働/電源切断不可
温水便座不明24h稼働/長期外出時、電源OFF可
(年間消費電力:116kWh)
ホームゲートウェイ15W24h稼働/長期外出時、電源OFF可
無線ルーター最大17.2W24h稼働/長期外出時、電源OFF可
電話機3.5W24h稼働/長期外出時、電源OFF可
エアコン(1)0.8W夏季のみ待機電力発生
エアコン(2)不明未使用のためコンセントを抜いてある
エアコン(3)1W以下未使用のためコンセントを抜いてある
照明器具0.5W/台壁SWでOFF/ONするため、待機電力なし
卓上スタンド1W利用の都度、コンセントに接続
デスクトップPC不明常時通電/長期外出時、電源OFF可
上記のモニター0.3W常時通電/長期外出時、電源OFF可
テレビ0.1WCASE by CASE
DVDレコーダー3.5WCASE by CASE
電子レンジ0W常時通電/待機電力ゼロ製品
洗濯機0W常時通電/待機電力ゼロ製品
USB充電器(複数)0.05W/台充電完了後もコンセントに接続
炊飯器0.85W使用時にコンセントに接続
タイマー利用あり(待機電力は予約時)
保温は使用せず
扇風機1W夏季のみ待機電力発生
オーブントースター不明利用の都度、コンセントに接続
家電別待機電力一覧

冷蔵庫は、待機電力と呼べないかもしれませんが、長期に外出する際でも電源を切れないものとして、上記の表に含めています。(長期に外出する際、設定変更で消費電力が減る可能性もあるので)

待機電力を極限まで減らしてみた

今回の『待機電力を極限まで減らしてみる』にチャレンジした理由は、待機電力を気にして生活する必要があるのか確認したかったからです。

実際、インターネット関連機器や電話機などは、電源は入っているけれど稼働時間は僅かな時間です。取扱説明書に記載されたような消費電力は発生しているのでしょうか。

電源を遮断できるものを全てオフにして外出

今回は、電源の切れないインターフォンガス給湯器、稼働が必須だった冷蔵庫の3点だけ通電状態で外出しました。
温水便座やインターネット機器はもちろん、電話機すらコンセントを抜いておきます。

以前、待機電力が発生する機器の対策を行わずに外出した際は、
1.6kWh/日~2.3kWh(中央値:1.7kWh/日~1.8kWh/日)だったので、
待機電力の大きそうなインターネット関連機器の電源を切った今回の結果が楽しみです。

結果発表!

24時間、完全に不在だった4日間のデータを、利用中のLooopでんきの電力使用量グラフから抜き出しました。

日付消費電力外気温(最高/最低)
9/281.5kWh26.6℃/16.9℃
9/291.7kWh26.3℃/17.5℃
9/301.6kWh29.2℃/19.3℃
10/11.5kWh20.9℃/19.4℃
我が家の待機電力

1.5kWh~1.7kWhと多少変動しています。時間単位のグラフで見ても、0kWh~0.1kWhの間を推移しており、突出して増加する時間はありません。

計算が合いません、ナゼなのでしょうか

この1.5kWh程度の消費電力の殆どは、冷蔵庫によるものでしょう。
我が家の冷蔵庫は、年間消費電力310kWhと記載されています。単純計算で0.85kWh/日です。

次に、インターフォンとガス給湯器の待機時消費電力を計算で求めてみます。
2つ合わせて、0.15kWh/日 !?
冷蔵庫の計算値と合算しても、実測値(1.5kWh)にかなり足りません。
どういうことなのでしょうか。

考えられるのは、冷蔵庫の消費電力が、実態として1.3kWh/日~1.5kWh/日あるのか...。
カタログ値の倍近いのでしょうか、信じられません。

それとも、家主も知らない隠れ待機電力でもあるのでしょうか

隠れ待機電力を探してみたら

家の中を注意深く見て回ります。

最初に気が付いたのは、ガス式 浴室換気乾燥機のリモコンの表示。
バックライトは点いていないものの、タイマーの残時間が常時表示されています。
そう言えば、停電すると設定したタイマー時間がリセットされていたことを思い出します。
製品の取り扱い説明書を確認しますが、待機電力は記載がありません。
ネットを探し回って、やっと見つけたのは、最新機種で「待機電力2W以下」の記載。

次に気が付いたのは、脱衣場の壁に付いた換気扇のスイッチ
単純なOFF/ONのスイッチなのですが、使用中は赤、停止中は緑のランプが点灯しています。
こんなところに待機電力がありました。
パナソニックのサイトで調べると、「待機電力0.04W以下」とあります。
更に、廊下や玄関、トイレの電灯用のスイッチが「ほたるスイッチ」というタイプで、常時ランプが点灯しています。

ここから目線は天井へ。
換気扇が気になります。
洗面所やトイレの換気扇は、壁のスイッチでOFF/ONするものや連動して自動で入るので、待機電力は無さそうです。

しかし、台所のレンジフードが怪しい
手元の取扱説明書には待機電力に関する記載がありません。ネットを探しても情報が皆無。
ただ、伝導ノイズ対策のフィルター回路がありそう、古い機器なので待機電力も多そうという直感が働きます。私の中では、20数年前のリモコンなしの扇風機並みの待機電力(1W前後)かなと...

隠れ待機電力を探してみたものの、見つけたものを足しても、やはり説明しきれない状況です。
一体、冷蔵庫の消費電力は、どれくらいなのでしょうか。
次回は、ブレーカーを活用して、冷蔵庫以外の電源を切って出かけよう。』と強く誓うのでした。

前回データと比較して見えてきたこと

待機電力が発生する機器への対策を行わずに外出した時の1年前のデータと比較してみます。

前回は、1.6kWh~2.3kWhと、かなり変動していましたが、今回は変動幅が減っています
前回の中央値が、1.7~1.8kWhだったので、そこから見ると、0.2kWhほどの減少です。

大雑把に言えば、インターネット関連機器、電話機、温水便座の待機電力は0.2kWh/日。
年間で73kWh。Looopでんき利用時の電気代として、1,927円(1日当たり5円)という結果になりました。

念のためにカタログ値からの待機電力と実測値を比較しておきます。

・温水便座:116kWh/年÷365日=0.32kWh/日
・インターネット関連機器と電話機:0.86kWh/日
・上記合計:1.18kWh/日

何かオカシイ。

使用していない時の温水便座の消費電力が、カタログ値より大幅に少ないのは理解できます。
我が家の温水便座は瞬間式。節電設定もしてあるので、未使用時間帯の待機電力はゼロに近いはず。

インターネット関連機器は、無通信時とフル稼働時では3割程度の消費電力差のはず。
ここでも、計算が合いません。

Looopでんきの電力使用量グラフを見ていた時に気が付きます。
深夜時間帯の電力消費が1年前より多そうだ。1年前より待機電力が大きく増えています

思い当たる節がないのですが...どこかに、電気泥棒がいるようです

次の課題は

今回の実験で、新たな課題などが見えた気がします。
冷蔵庫の消費電力を知ること、電気泥棒を見つけることが、次のテーマなのですが、これが中々...

『エコワットなどなど簡易な電力計を使えば良いのに』と思われるかもしれませんが、
冷蔵庫のACケーブルは、直接コンセントに差し込むように推奨されています。
つまり、冷蔵庫の電源プラグとコンセントの間に、コンセント式の電力計は挟むなということです。

正しい測定方法は、クランプ式の電力計を買うか、電力会社のスマートメータで計測させるかです。

待機電力が測れる精度のクランプ式の電力計は高い。とても、趣味の世界で買えるものではありません。

そんな事情で、我が家は、外出&スマートメーターでの計測の繰り返しで次のテーマに取り組むことにしました。